家づくりの土地探しでは、敷地まわりのブロック塀が後々のトラブルの原因になることがあります。
こんな不安はありませんか?
- 境界線上の塀は誰のものか、費用はどちらが負担するのか不明
- 古い塀が傾いて見える。撤去か補修か、判断に迷う
- 契約後に越境が発覚し、工期や費用が膨らむのは避けたい
本記事では、現地での確認ポイント、所有や越境の整理、費用感と交渉の進め方を実務目線で解説します。契約前に必要な調査と書面化のステップまで一気に押さえて、ムダな支出と近隣トラブルを最小化しましょう。

松本拓久
役職:代表取締役
資格:一般耐震診断士、大阪府被災地危険度判定士
20歳から約30年にわたり大工として新築・リフォームの現場に携わり、1,000件以上の工事に携わってきました。2012年より株式会社matsukouの代表取締役に就任し、現場経験を活かした住まいづくりに取り組んでいます。
土地探しで押さえたいブロック塀の知識とは?
ブロック塀は境界線付近に設置されることが多く、物理的な安全性と法的な扱いの両面で重要です。購入前に「どこを見て、どう判断するか」を理解しておかないと、契約後に補修や撤去費用が発生しやすく、近隣とのトラブルの原因になります。
ブロック塀の法的・技術的な基礎知識
ブロック塀はコンクリートブロックに鉄筋を入れて積むのが一般的で、高さや鉄筋、控え壁などは建築基準法や自治体基準に従います。
コンクリートブロックの基礎知識
- 高さはおおむね2.2m以下。1.2m超は控え壁が必要なことが多い
- 鉄筋は縦横に一定間隔で配置し、径9mm以上が目安
- 基礎の根入れや幅が不足すると、地震で倒れやすい
古い塀は当時の基準で造られており、今の安全水準を満たしていないことがあります。安全性の判断に、これらの基礎知識が役立ちます。
境界線と所有者の考え方
境界線上のブロック塀は、共有の場合も単独所有の場合もあります。
- 境界線「上」にある:共有扱いが多い
- 境界線の「内側(自分側)」:基本はその土地の所有
- 基礎のみ越境:上部と基礎の位置が異なるややこしいケースもある
所有判断には、実測図・確定測量図、土地家屋調査士の確認、売主の説明、過去の覚書などが必要です。詳細を曖昧なまま購入してしまうと、補修・撤去の費用負担で揉めるリスクが高まります。
いつ・誰に・何を相談すべきか
現地で危険を感じた場合は建築士へ、境界の疑義については土地家屋調査士へ、契約や覚書は不動産会社や司法書士に相談しましょう。安全性を先に確認することが、危険な物件を購入してしまったり、ムダな費用負担を避ける近道です。
土地探しの現地で行うブロック塀の確認ポイント
土地を購入するときは、越境・傾き・基礎・設置年を確認し、「何が問題で、費用はいくらで、誰が負担するか」を見える化します。
越境(基礎含む)の見分け方と図面の突合
越境を確認するときのポイントは、位置関係と水平性です。
- 現地で塀芯と境界標の位置関係を確認
- 実測図・確定測量図と突き合わせ、塀と境界線のズレを把握
- 基礎の越境をメジャーと水平器で確認
- 隣地の工作物との取り合いを写真で記録
上部は内側でも基礎が越境、基礎は内側でも笠木が越境、全面越境など多様です。どの部分がどちらの敷地にあるのか、図面と写真で証明できる状態にしておきましょう。

傾き・ひび割れ・老朽の危険サイン
傾きやひび割れ、老朽化のサインも見逃すと、建てた後に費用が発生する場合があります。
- 傾き:糸や下げ振りで上端と基礎のズレを計測(1/100以上は要注意)
- ひび割れ:貫通や筋違い、クラック幅(0.5mm超は補修検討)
- 腐食:鉄筋露出や錆汁跡は強度低下のサイン
- 基礎:根入れ不足、土の洗掘、沈下痕
- 付帯:控え壁不足、目地劣化、樹木の根の圧迫
古い塀は地震時の倒壊リスクが高く、周囲に危険です。安全最優先の判断が欠かせません。
設置年と構造の確認方法
設置年と構造を確認するときは、複数のヒントから情報を集めましょう。
- 設置年:売主や不動産会社の説明、固定資産台帳、過去の工事写真などから
- 構造:控え壁の有無、鉄筋のかぶり厚、ブロックのJIS刻印、近隣の同時期施工の情報
築50年以上の場合は、撤去や全面改修を前提に検討するのが無難です。
見落としがちな注意点とデメリット
土地を探す際に見落としがちな塀のポイントとして、5つの注意点があります。
- 共有物だと補修・撤去に相手の同意が必要で時間が掛かる
- 隣地の建築計画で、塀の位置や高さの見直しを求められる可能性
- 越境解消を後回しにすると、売買や建築確認で停滞する
- 覚書が不十分だと、所有者変更後に合意の効力があいまいになる
- 解体費が想定より高く、設計や予算に影響する
早めに調査と交渉の段取りを決めて、影響を最小化しましょう。
ブロック塀の越境・共有・所有者問題の解決法
ブロック塀の位置関係や負担の分け方を整えておくと、契約条件や覚書に落とし込みやすくなります。解決方法として、所有・許可・覚書の作り方の観点でまとめます。
所有|共有か単独かの判断軸
- 塀芯が境界線「上」にある場合、共有とみなすのが一般的
- 売主の説明と過去の合意書で裏付け、土地家屋調査士の見解を添付
- 単独所有なら所有者の許可で変更可。共有は双方の合意が必要
- 証明用に、位置図・写真・実測図・確定測量図・登記情報をセットで保管します。
許可|許可と申請が必要なケース
- 道路側の高い塀の新設・大規模改修は自治体基準への適合が必要
- 景観地区・風致地区・埋蔵文化財地域などは事前協議が必要
- 共有物の変更は相手方の書面同意が必要
建築士に設計を依頼し、適合性と安全性を同時に確保しましょう。
覚書|覚書(合意書)を作成するときの要点
- 所有者の特定(共有時は持分も明記)
- 設置・補修・撤去の費用負担と実施時期
- 将来の建て替えや設計変更時の方針
- 越境の解消方法と期限
- 所有権移転時の合意継承条項
- 地震などの緊急時対応
テンプレートをそのまま使用して作成せず、現地状況に合わせて条文を調整することが重要です。
安全性と費用面について
現地の状態によって、補修で済むのか、撤去・新設が必要かを見極めます。費用と工期の見立てが購入判断のカギです。
補修・撤去・新設の判断基準
補修や撤去が必要な場合と、新設する場合の判断基準は、次のポイントをもとに照らし合わせてみましょう。
- 補修でよい:傾きが小さい、ひびが微細、基礎が健全、比較的新しい
- 撤去・新設が妥当:傾き大、鉄筋腐食、根入れ不足、控え壁なし、築年古い
- フェンス化:目隠し不要なら軽量で地震に強く、費用も抑えやすい
安全はコストより優先です。倒壊リスクを抱えたままの維持は避けましょう。
費用・時間の目安(相場)
補修・撤去・新設などをするときに、どれだけ費用や日数がかかるかなどは次の表を参考にしてください。
| 内容 | 概要 | 費用の目安 | 時間の目安 |
|---|---|---|---|
| 点検・調査 | 建築士現調、簡易レポート | 3万〜8万円 | 1〜2週間 |
| 撤去 | 既存ブロック塀解体・処分 | 8,000〜15,000円/m | 1〜3日 |
| 新設(ブロック) | 高さ1.2m程度、鉄筋・基礎含む | 25,000〜45,000円/m | 1〜2週間 |
| 新設(フェンス) | メッシュ/アルミ支柱 | 12,000〜30,000円/m | 2〜5日 |
| 控え壁追加 | 3〜3.5mごと | 15,000〜30,000円/カ所 | 1日 |
| 測量・境界確定 | 土地家屋調査士 | 20万〜50万円 | 1〜2カ月 |
エリアや会社、現場条件で変動します。見積もりは複数社で比較してから検討しましょう。
誰が負担するのか(費用分担の考え方)
費用負担を誰がするのかという点も、事前に理解しておかないと急な出費となるため、注意が必要です。
- 単独所有:原則その所有者負担
- 共有:按分が基本。安全上の緊急性が高い場合は仮払い合意も検討
- 越境解消:越境側が撤去負担、代替設置は折半など柔軟に合意
- 売買契約:引渡し前に売主負担で撤去・補修、または価格調整も有効
契約条項と覚書に具体的に明記して、後日の解釈違いを防ぎます。
設計と安全を両立する実務ポイント
設計と安全性を両立するために重要なポイントを実務レベルでまとめています。
- 高さを抑える、または控え壁を適切に設ける
- 鉄筋量と基礎寸法を十分に確保し、図面を残す
- 排水計画や樹木の根対策も設計に含める
- 道路側は見通しと歩行者の安全に配慮する
設計段階で地震時の挙動を意識すると、長期の維持コストも抑えられます。
契約前にやるべき調査と書面化の流れ
契約後に問題やトラブルが発生すると価格交渉は難航します。未然に防ぐために、契約前に調査・合意・書面化までセットで進めるのが、時間と費用を最小化するコツです。
調査|5つの確認ステップ
- 現地で写真・動画・寸法・傾きの簡易計測を行う
- 不動産会社に設置年・所有者・補修履歴を確認
- 土地家屋調査士に境界線と越境の調査を依頼
- 建築士に安全性と補修可否を確認
- 撤去・新設を視野に、工事会社から概算見積を取得

合意|不動産会社・専門家の使い分け
- 不動産会社:売主・隣地との段取り、契約条項の取りまとめ
- 土地家屋調査士:境界・越境の証明や図面の作成
- 建築士:設計と安全性評価、改修提案
- 司法書士:覚書や合意の法的整備
- 役割を分けると、工程のムダを減らせます。
書面化|契約書・特約・覚書のポイント
- 契約特約:引渡しまでに売主負担で撤去、または具体額の価格調整
- 覚書:所有者、境界・越境の有無、位置図、費用、時期、将来対応
- 立会記録:現地で双方署名の立会確認書を残す
- 期限設定:工事や確認の締切と、遅延時の対応
書面が揃えば「言った・言わない」といった水掛け論のリスクがぐっと下がります。
実務で役立つ小さなコツ
- 現地で「上部・基礎・位置」をチョークで一時マーキングし写真保存
- 隣地所有者の連絡は不動産会社経由で行う。書面は必ず複写を保管
- 建替え計画があるなら、仮設フェンス→本設の二段階で最適化
- 古い塀は地震保険・火災保険の付帯条件も合わせて確認
ブロック塀についてよくある質問
ブロック塀について、よくある質問として悩むポイントを整理します。
Q. 境界線上のブロック塀、勝手に撤去して良い?
A.共有の可能性が高く、独断での撤去は避けましょう。所有確認のうえ相手の同意と覚書を整備します。危険が高い場合は、行政や専門家の意見書も活用して合意形成します。
Q. 少しだけ傾いていますが、補修で大丈夫?
A.傾きが小さく、基礎・鉄筋が健全なら補修可能です。ただし古い基準の塀は部分補修が根本解決にならないことがあります。建築士の現地調査で判断しましょう。
Q. 誰が費用を負担するのか揉めています…
A.単独所有は原則その所有者です。共有は按分が基本。越境解消は越境側負担が筋ですが、代替設置は折半など実務的に調整します。覚書に費用・時期・方法と継承条項を明記してください。
Q. 古いブロック塀を残したまま家を建てても良い?
A.安全性に不安があれば、撤去や新設を先行しましょう。建築確認の直接対象でなくても、地震時の危険を放置すれば事故やトラブルの恐れがあります。先にリスクを下げる方が結果的に得です。
まとめ
土地探しでは、ブロック塀の越境や傾きなどのリスクを契約前に具体的に確認することが重要です。境界との位置関係、基礎や鉄筋、設置年、控え壁の有無、基準への適合を丁寧に見て、必要なら撤去・補修・新設の費用と工期を把握します。
所有や共有、費用負担は覚書と契約条項に落とし込み、将来の建替え時の方針まで明記すると安心です。迷ったら不動産会社・土地家屋調査士・建築士の連携で、証拠として残る資料を整えましょう。安全とコストのバランスを取りながら進めれば、購入後の後悔をぐっと減らせます。


